前回の記事で、僕が最も影響を受けたひとりの女性の話を書きました。
その方との最初の出会いは既に書いたとおりですが、その後に公私ともに深く関わっていただけたのも、美に対するイメージに共通のものが多くあったからではないかとおもいます。
最初に仕事の依頼をしに来てくださった時に、自分はクリスチャン・ディオールが好きだというお話をしてくださいまいした。
もちろん、ディオールというブランドの存在は知っていましたが、自分とは無関係な世界だと、その時は聞いていました。
お会いしたその時期にちょうどディオールのデザイナーをしていたのが、ラフ・シモンズというデザイナーだったのですが、その名前を聞いた時、自分が中学生の時ラフ・シモンズの服に憧れていたのを思い出し、思いがけない名前が飛び出たことに、会話が弾んだことを思い出します。
中学生の時にメンズ・ノンノというファッション雑誌を読んでラフ・シモンズのデザインしたコートに漠然とした憧れを抱いていた僕は、当然購入できるわけでもなく、古着屋で近いデザインを探す日々を送っていました。
やがてそんな憧れも忘れ去ったちょうどその時、そのラフ・シモンズが今はディオールのデザイナーをやっている、と教えてもらったのは何かとてもワクワクする感覚がしたのを覚えています。
その後その方のお宅にお邪魔した時に、「ディオールと私」というディオール創業者本人が著した本を紹介していただきました。
同時に、ラフ・シモンズが初のディオールコレクションを任されたときのドキュメントDVDも。
それを観たときの鮮やかな印象は今でも忘れることができません。
美に対する強烈なイメージを持った人たちと、その世界が、現代でも存在していること。
そして、それを知っている日本人が目の前にいることが、とても嬉しく感じたものでした。
その後程なくして、フランス旅行にご一緒させて頂く機会があった時も、偶然にルーブルの近くでディオールの展覧会が開催されていたのをいっしょに観覧したときは、ともに興奮して5時間あっという間に過ぎてしまっていたのも、思い出しては皆でおかしがっていたものです。
ディオールの自伝を読み感じることは、純粋な美への憧れだったのではないかとおもいます。
彼の中の”貴婦人”というイメージはとても重要なものだとおもいます。
男女間や家族への愛を超えるほどの何かもっと高いイメージとしての”貴婦人”。
僕にはそれが今、よくわかる気がします。